TOP INTERVIEW
代表取締役社長 上村一明
交通誘導、イベントの警備において、高知県下で圧倒的なシェアを誇る国土第一警備保障株式会社。
同社が行ってきた独自の取り組みや企業努力を伺いました。
-御社では、警備業界のマイナスのイメージを払拭し「警備員の地位を向上させる」ことに力を入れているそうですが、それにはどのような背景がありましたか?
上村:警備の仕事は早朝や夜間帯が多く、野外での立ち作業のため、「きつい、きたない、きけん」というイメージを持たれがちで、また、警備士のマナーや服装の悪さも問題視されていました。賃金も低いため「腰かけ」として働かざるを得ない面があり、人材の入れ替わりが激しく、仕事の質はいつまでたっても上がらない・・という現状がありました。
そこで私たちは、警備の仕事を「やりがいが感じられ、一家の大黒柱として家族を養っていける仕事」にしていきたいと考え、様々な改革を行ってきたのです。
-具体的にはどのような改革を行ってきましたか?
上村:従業員に仕事に見合う正当な賃金を支払うには、業界全体で値下げが当たり前の様になってしまった受注価格を、クライアント様に見直していただく必要がありました。そこで私たちは、他社にはない質の高い仕事を提供していくことで、クライアント様に納得していただこうと考えました。
まずは、警備の仕事を「接客業」ととらえ、その視点で、一人一人の仕事の質を上げることに取り組みました。なぜなら、工事現場や量販店では、一般のドライバーやお客様がまず最初に接するのは私たち警備士。警備士の対応を通して、会社やお店の印象が決まると言っても過言ではありません。だからこそ旗の振り方から礼の仕方、臨機応変な誘導、服装や髪形まで丁寧に指導し、スムーズな交通誘導はもちろん、気持ちの良い印象を持っていただけるよう徹底してきました。
また、弊社では現地で使用する備品や車両にも他社にはない工夫を凝らし、現場と従業員の安全確保にも十分努めています。例えば、通常の1.5倍の大きさの旗や、遠方からでも目立つLED電光掲示板、夜間は周辺に配慮し後方だけが点灯する回転灯など、従業員やクライアント様、近隣住民の方のご意見も伺い、オーダーメイドの製品を取り入れています。さらに、社員の待遇に関しては、社会保険や労災の充実、栄養士さんによる1日2食付きの社宅の整備なども行い、快適に、継続的に働いてもらえる環境を整えています。
-そうした改革を行うことで、クライアント様や従業員に変化は表れましたか?
上村:まずクライアント様には、あらゆる面から自社の仕事に付加価値をつけたことで、自信をもって適正価格でのご依頼をお願いすることができています。同時に「国土第一警備保障なら安心して仕事を任せられる。他とは違う」という大きな信頼感を得て、依頼をいただくことが多くなりました。
そして従業員に関しては、賃金がアップしたことで離職率がぐんと減り、長期で働いてくれる人が増えましたね。また弊社では「交通誘導警備1~2級」などの資格取得を目指す従業員には、研修等でサポートを行っているのですが、検定に挑戦する人数が以前よりも増え、合格率も95%と高い水準を誇っています。
-警備の仕事の魅力や、やりがいを教えてください
上村:弊社では交通誘導警備、施設、店舗、イベントの警備などを行っていますが、中でも建設業者様から依頼される工事現場での交通誘導警備が主流です。そのため、繁忙期には仕事が集中することがありますが、普段は時間的にも融通がききますので、趣味を楽しんだり、資格取得に向けて勉強をしたりと時間を有効に使えます。反対に繁忙期にはしっかり稼ぐ、という働き方ができます。また、早く終わっても日当は変わらないので、日によっては1日に数件をかけもちし、一気に稼ぐことも可能です。サービス残業はもちろんありませんし、勤務時間にある程度融通が利くところもメリットです。
他にも、弊社は一般のドライバーさんやクライアント様から「こんなに丁寧な礼、誘導をする警備士さんは初めて」「安全な誘導で助かりました」などと、手紙やお電話で度々お褒めの言葉をいただきます。こういった声は現場の警備士にも直接届けて、モチベーションのアップにつなげています。
-今後の御社の目標、取り組むべき課題を教えてください
上村:先ほども申しましたように、弊社は工事、建設現場での交通誘導警備が主流のため建設業界、中でも公共事業の状況に、現場の仕事量を左右される点が否めません。
現在のように9~3月に事業が集中している状態は、高知県で3割が従事する建設業や我々の業界にとって、健全とはいえません。賃金の支払い、人材の確保、工期などにおいて、業者側の負担が大きいのです。この状況を根本から変えていくため、弊社ではこれまでありとあらゆる行政、機関に陳情や請願を行ってきました。そしてようやく話を聞き入れてくれるようになり、協議を重ねているところです。
また、最近では働き手が高齢化し、慢性的な若手の人材不足に陥っていることも課題です。我々の業界と関わる建設業界においても担い手が育っておらず、今後が非常に心配です。「きつい、きたない、きけん」なイメージや状況から一刻も早く脱却し、若者が自ら就きたいと思える職業へと生まれ変わらなければなりません。その為に、新たな雇用の仕方にも取り組み始めています。
この激動の時代には、数年先を見越した先見性と、スピード感のある改革が必要だと考えています。私たちはこれまで通り置かれている状況に「仕方ない」とあきらめるのではなく、数年、数十年先のビジョンを明確にし、さらに前進し続けていきます。
警備業界の雇用を増やし、業績をのばし、さらにいきいきとした企業に成長することで、高知県全体の活性化に少しでも貢献できれば幸いです。
取材・文/森 絵理子
(2016年4月取材)